平成30年6月の大阪府北部地震では、高槻市で登校途中の小学生が倒壊したブロック塀の下敷きになり死亡するという痛ましい事故がありました。大きなニュースになったのでご存知の方も多いと思います。
倒壊したブロック塀が建築基準法に適合していなかったことが問題になって、日本中の小学校で同様の不適合ブロック塀がないか大騒ぎで緊急点検する様子が、テレビなどで頻繁に流されました。
では、建築基準法不適合のままのブロック塀が何故そんなに多くあったのでしょうか?「行政の怠慢だろう、きっと」そんな思いを抱いた方も少なくないのでは。でも、実際のところはどうなのでしょうか。
建築基準法に不適合な建築物は、実はブロック塀に限らず街にあふれています。しかもそれらは、必ずしも直ぐに建て直さなければならない訳ではないのです。
日本は比較的大きな災害の多い国ですが、阪神大震災や東日本大震災などの大きな災害がある度に、建築基準法などの法律はより安全を求めて厳しく改正されてきました。必要な措置だと思います。でも、建築した時には適法だったのに、法改正した途端に「違法建築だ!直ぐに建て直せ!」となったら、たちまち世の中が混乱してしまいます。
そこで行政は、建物が建設された時点がどうだったかで扱いを決めています。その時点で違法なら「違反建築」、その時は合法だったら「既存不適格建築」という風に分けて運用しているのです。
前者はもちろん「違法」ですからすぐに是正を求められます。でも後者は「違法状態ではあるけれども、直ちに違法だ!直せ!というわけではない」として、次に増築や建替えなどをする時まで現状維持を容認されているのです。
不動産購入の時に問題になるのは、建物だけでなく門扉や塀も一体として建築確認の対象になっている場合があって、その時にこの「既存不適格建築物」が含まれている場合があった時です。
例えば現存するブロック塀が、今は「既存不適格建築物」で違法ではないけれども、新築建物の建築確認申請では違法建築になってしまう場合があります。注意が必要です。
敷地の付属建築物にも注意を払って、ぜひプロに相談してみてください。
※ブロック塀を点検する時のチェックポイントは、国土交通省ホームページ「建築物の塀(ブロック塀や組積造の塀)の安全点検等について」を検索・参照してみてください。